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アンチクライスト



(C) Zentropa Entertainments 2009

「アンチクライスト」という映画を観てきました、原題もそのまま「ANTICHRIST」で「キリストの敵」「反キリスト」ということになるかと思います。

あらすじは、
愛し合っている最中に息子を事故で失った妻(シャルロット・ゲンズブール)は罪悪感から精神を病んでしまい、セラピストの夫(ウィレム・デフォー)は妻を何とかしようと森の中にあるエデンと呼ぶ山小屋に連れて行って治療を試みるが、事態はますます悪化していき……。(シネマトゥデイ)

映画「アンチクライスト」公式サイト
http://www.antichrist.jp/

ネタバレする可能性があります、また、それ以上に個人の解釈ということをご了承ください。 画像はオーストラリアのポスターです、きゃー。

物語の最初のハイスピードカメラによるスローモーションのモノクロ映像が、クラシックな音楽と相まってとても美しいです。 でも、そこで行われている性行為や恍惚とした表情は、美しさからは遠い、とても俗欲的な感じがしました。 そのシーンは故意ではなく事故だったように見えるのですが、そこで感じる違和感が最後にはわかって、驚きつつやっぱりと思ったりします。

そこで子供が机の上から落とす人形に、Grief/悲観、Pain/苦痛、Despair/絶望 とあり、物語の後半の三人の愚者(乞食)の話しにつながります。 それぞれが、鹿、狐、鴉 という動物があてはめられ、実際に画面に登場します、そして三人の愚者が揃うと誰かが死ぬ、というのです。

たしか、誕生したキリストに三人の賢者が会い祝福をする、という話があったと思いだして、ネットで検索したら、お祝いに 乳香、没薬、黄金 を贈ったと書いてありました。 始めのシーンでその逆の三人の愚者が登場するのが、誕生を祝うの逆で、子供の死の暗示でもあったのではないでしょうか? (もちろん違う人も死にますが)

宗教的な下地が私には無いのでわからないことが沢山あると思ったので、感想を書く前に珍しく他の人の感想を読んでみました。 女性蔑視が根底にある、という意見は多かったけれど(物語のなか、魔女狩り的な女性への暴力が彼女の研究テーマであり、その研究は完成しないのだけれども、そこからだんだんと狂っていくという描写もある)、私はあまりそう思いませんでした。 そこで筋道立てずバラバラですが、いろいろ思ったことを書いてみることにします。

森に向かう電車の窓に一瞬映るのはマリリン・マンソンさんのアルバム「アンチクライスト・スーパースター」のジャケットの顔でないかと思ったり(笑)。

エデンと呼ばれる森へ二人で向かうというのは、やはりアダムとイブを想像してしまいます。 落ちた林檎の実を食べたということではないのでしょうけれど、ドングリだとか雛だとかいろんな物が落ちるし、何より最初に子供が落ちることから、この狂った話が始まるのは、もしかしたら関係があったりするんじゃないかと。

神や悪魔の暗示も出てきます。 夫が足に石のオモリを着けられてしまうのは、十字架を背負わされて歩かされたキリストのことなのかとも思いました。 妻がセックスを強要したり自慰をしたりするのが、処女でキリストを身ごもるマリアの反対で、悪魔的なものとしての表現なのかと思ったり。 その悪魔、邪悪なものを夫は手にかけて、同じ次元に落ちてしまうのだけれども、そのあと逃げ出して歩くのがゴルゴタの丘で、そこをある意味成仏した女性たちが登っていく。

監督のラース・フォン・トリアーさんのインタビューも読みました。 特に宗教的なことを表したわけではない、とあるので、無理な深読みをすることはないと思いますが、現実と空想が入り混じった世界は、難解であることに間違いはないです。 それを映像だけで考えると、単にかなりホラーでバイオレンスな映画になってしまいますもの。

アダムとイブが禁断の実を食べて、そこから性行為が始まったとして、その根源である男女の性器をあんなことやこんなことをしてしまうのも、その冤罪から逃れる行為とするのは無理かしら。

要所要所でわかりやすい暗示もあるのだけれど、私にはよくわからない。 自然ですら崇高なものではなく、邪悪なものだとする。 女も男も、動物も、神ですら、そうだと言っているようです。 登場する動物たち、鹿、狐、鴉。 鹿は死産した子供をぶら下げたまま歩き、狐は自分の中身を舐め、鴉はいくら殺しても死なない。 神でも邪悪でもない子供は、やはり初めから死ぬことになっていて、次は女の自虐であり、一番駄目駄目だった男が最後まで死ねない絶望を味わう。

恐怖のピラミッドの頂点は、カウンセラーの夫が書き入れる「?」から「SATAN」となり最後に「ME」となる。 ME の映画の字幕は彼女、つまり彼女自身だというのだけれども、それなら SHE じゃないのかな? MINE でもなく US でもない ME は、もしかしたら夫のこと男のことなのではないか、と思いました。

芸術的な映像のオープニングからボカシが入る18禁の映画です、予告編以上の内容と共におすすめしませんが、それでもという人だけ観ればよいと思います。 

鹿狐鴉の家来を従えた森ガールには子供がいました (天国ななお)
by momomiyam | 2011-03-08 20:00 | 映画


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